無印良品(中国)から学ぶ、海外商標の重要性
2026/8/24
無印良品(中国)から学ぶ、海外商標の重要性
日本で広く知られている「無印良品」。シンプルで統一感のある商品や店舗づくりで、国内外に多くのファンを持つブランドです。
しかし中国では、「無印良品」という商標をめぐって長期にわたる争いが続きました。
「日本で有名なブランドなのだから、中国でも当然に使えるのではないか」
そう思う方もいるかもしれません。ところが、商標権は国ごとに成立する権利です。日本で商標登録を受けていても、中国で自動的に同じ権利が認められるわけではありません。
無印良品の中国での商標問題は、海外進出を考える企業にとって、海外商標をいつ、どの国で確保するべきかを考えるうえで重要な事例です。
中国で先に登録されていた「無印良品」
中国では、良品計画が店舗展開を始める前に、第三者が「无印良品」の商標を第24類の織物、タオル、寝具などについて出願・登録していました。この商標は、後に北京棉田紡績品有限公司へ譲渡されています。
良品計画は中国へ進出後、「無印良品」や「MUJI」などの商標について権利を確保してきました。しかし、第24類の一部商品については、第三者の登録商標が存在していました。
そのため、中国において「無印良品」の名称を使用した商品を販売する際、商品分野によっては、第三者の商標権との関係が問題となりました。
本家でも敗訴することがある
2019年、中国の裁判所は、第24類の織物製品などに関する商標権侵害をめぐる訴訟で、良品計画側に損害賠償等の支払いを命じる判断を示しました。
この出来事は、「本家であっても、現地で他者が有効な商標権を持っていれば、その権利との関係を無視できない」ことを示しています。良品計画が日本で「無印良品」を長年使用してきた事実だけで、中国における第24類の商標権を当然に得られるわけではなかったのです。
もっとも、中国における無印良品をめぐる商標問題は、商品区分や商標の構成、訴訟ごとに結論が異なる複雑なものです。ここでは、一部の商品分野で先行登録が存在し、長期の対応が必要になった点に注目します。
海外商標は「進出前」に考える
海外進出について、「現地で売れる見込みが出てから商標を出願すればよい」と考えることもあるでしょう。
しかし、その段階では、すでに第三者が同じ又は似た商標を出願・登録している可能性があります。先行登録が見つかれば、名称変更、権利者との交渉、無効審判や訴訟などを検討しなければならない場合があります。
また、海外では日本と商品・サービスの区分の考え方や、審査・権利行使の実務が異なることがあります。日本での登録内容をそのまま海外へ持ち込めるとは限りません。
中国のように先願主義を採る国では、事業の開始前に、必要な商品・サービスの範囲を検討し、商標調査と出願を進めることが特に重要です。
中小企業にも関係する
「海外商標は、大企業のためのもの」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、現在は越境EC、海外向けSNS、海外の展示会、インバウンド需要、海外企業との取引などを通じて、中小企業やスタートアップでも海外の顧客と接点を持つ機会が増えています。
自社で直接輸出をしなくても、取引先を通じて商品が海外で販売されることもあります。商品名やブランド名が海外で知られ始めてからでは、選べる対応策が限られる場合があります。
海外商標は、すべての国で一度に取得する必要があるものではありません。事業計画、販売先、取引先の所在地、模倣リスク、予算などを踏まえ、優先順位を付けて検討することが現実的です。
この事例から学べること
無印良品の中国での商標問題は、日本で有名なブランドであっても、海外では別の商標権との関係を整理する必要があることを示しています。
重要なのは、「海外進出するかどうか」だけでなく、将来、どの国で自社のブランドを使う可能性があるかを早めに考えることです。
海外で販売又は販売予定のある商品・サービスは何か
どの国・地域を優先して守るべきか
現地で同じ又は似た商標が登録されていないか
自社の商標登録で、必要な商品・サービスをカバーできているか
海外商標は、事業が大きくなってから考えるものではありません。ブランドを育てる段階で、将来の可能性を見据えながら準備しておくことで、海外展開時の選択肢を広げることにつながります。
※本記事は公開情報を基に、商標実務上の一般的な論点を解説するものです。個別の侵害の成否を判断するものではありません。