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商標事例に学ぶ⑨ |「面白い恋人」はなぜ問題になった? パロディ商品と“全体の印象”を考える
徳山英浩
この記事は、会社名、店名、商品名、サービス名などをこれから決める中小企業・個人事業主の方、自社ブランドを育てている方に向けて書いています。
前回は、高級腕時計ブランド「フランク・ミュラー」を連想させる「フランク三浦」の商標登録が争われた事件を取り上げました。
「フランク三浦」事件では、パロディ的な名称であることだけを理由に結論が決まったわけではありません。商標の見た目、読み方、意味合い、取引の実情などを踏まえ、「フランク三浦」の商標登録は最終的に維持されました。
では、パロディとして作られた商品であれば、どこまで許されるのでしょうか。
今回取り上げるのは、北海道土産として知られる「白い恋人」と、大阪土産として販売された「面白い恋人」をめぐる事件です。
この事件では、商品名だけでなく、パッケージや販売地域なども含めて争われました。
最終的には裁判上の和解で解決したため、裁判所が「ここまでなら適法」「ここからは違法」と明確な線を引いた判決ではありません。
だからこそ、名称を決める事業者にとっては、「パロディなら大丈夫」「名前を少し変えれば大丈夫」と考えることの危うさを示す、参考になる事例です。
「白い恋人」と「面白い恋人」
「白い恋人」は、石屋製菓が販売する北海道土産として広く知られた菓子です。
一方、「面白い恋人」は、吉本興業グループなどが販売した大阪土産の菓子です。名称は「白い恋人」をもじったものとして受け取られやすく、関西を中心に販売されました。
「白い恋人」と「面白い恋人」は、文字だけを見ると同じではありません。
「白い」と「面白い」は異なりますし、商品の中身も同一ではありません。
しかし、石屋製菓側は、商品名やパッケージの図柄などが「白い恋人」と類似しているとして、商標権侵害および不正競争防止法違反を理由に、販売の差止めや損害賠償を求めて提訴しました。
商品名だけでなくパッケージも争われた
前回の「フランク三浦」事件では、登録商標そのものが有効かどうかが中心でした。
これに対し、「面白い恋人」事件では、商品名だけでなく、パッケージデザインなども含めて争われました。
商品名、ロゴ、パッケージの色や配置、文字の雰囲気、商品の形状、販売される場所、広告や店頭での見せ方は、それぞれ別の要素です。
しかし、消費者が商品を選ぶ場面では、こうした要素を一つずつ切り離して見るとは限りません。
不正競争防止法では、広く知られた商品名、ロゴ、パッケージなどと同一又は類似の表示を使い、他人の商品や営業と混同を生じさせる行為が規制されることがあります。さらに、著名な表示については、混同のおそれが明確でなくても問題となる場合があります。
ただし、この事件では和解が成立しているため、実際にこれらの要件を満たすと裁判所が判断したわけではありません。

裁判ではなく、和解で終わった
この事件は2011年、石屋製菓が吉本興業グループなどを相手に、商標権侵害および不正競争防止法違反を理由として提訴したものです。
その後、2013年2月13日に札幌地裁で裁判上の和解が成立しました。
和解では、「面白い恋人」という商品名は維持されました。一方で、パッケージデザインを変更し、常設の販売場所を滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山の関西6府県に限定することなどが合意されました。損害賠償金は支払わない内容でした。なお、北海道・青森県を除く地域での催事販売には、一定の条件のもと例外が設けられていました。
ここで大切なのは、和解が成立したからといって、「面白い恋人」が違法だった、あるいは適法だったと裁判所が最終判断したわけではない、という点です。
和解は、当事者が一定の条件を受け入れ、紛争を終わらせる解決方法です。この事件では、パッケージデザインの変更や販売地域の限定を含む内容で、両当事者が合意に至りました。
パロディの線引きは難しい
「面白い恋人」は、「白い恋人」を知っている人ほど、その言葉遊びに気付く商品です。
パロディには、親しみや話題性を生む力があります。一方で、他社が長年かけて築いた知名度やブランドイメージとの関係が問題となることもあります。
そのため、次のような考え方は危険です。
商品名を少し変えれば問題ない
商標が完全に同じでなければ大丈夫
地域を変えれば問題にならない
パロディだと分かれば自由に使える
相手の商品と中身が違えば問題ない
「面白い恋人」事件では裁判所による最終的な判断は示されませんでしたが、商品名だけでなく、パッケージや販売地域も含めて紛争となり、最終的にはパッケージの変更と販売地域の限定を含む内容で和解が成立しました。
商品名だけを見て問題がないと判断するのではなく、実際にどのようなパッケージで、どの地域で、どのように販売するのかまで確認しておくことが、紛争を避けるうえでは大切です。
自社の商品名を決める前に
商品名やパッケージを考える際には、次の点を確認してみてください。
有名な他社商品を連想させる商品名になっていないか
名前だけでなく、色、書体、レイアウト、包装、商品形状を含めて似せすぎていないか
「パロディだから分かるはず」と、自社に都合よく考えていないか
販売地域、販売先、広告の方法を含めて、消費者にどのような印象を与えるか
仮に話題になったとしても、長期的に自社独自のブランドとして育てられるか
商標登録を受けられるかどうかと、実際の販売方法まで含めて問題がないかどうかは、必ずしも同じではありません。
また、地域限定で販売すれば常に安全ということでもありません。販売地域は、取引の実情や消費者の受け止め方を考える際の一事情になり得ますが、それだけで問題が解決するわけではありません。
商品名、パッケージ、ロゴ、販売方法を別々に考えるのではなく、消費者に見えるブランド全体として確認することが大切です。
ブランドを育てるということ
石屋製菓側が守ろうとしたのは、商品名だけではなく、長年の販売によって築いてきた「白い恋人」というブランド全体の信用やイメージだったと考えられます。
ブランドは、商標を登録しただけで完成するものではありません。商品名、ロゴ、パッケージ、広告、販売場所、顧客との接点を通じて、少しずつ信用が積み重なっていきます。
だからこそ、新しい商品を出すときには、他社ブランドとの関係を慎重に確認する必要があります。同時に、自社ブランドを育てている事業者は、類似した商品名やパッケージが出てきたときに、どのように対応するかを考えておくことも大切です。
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会社名、店名、商品名、サービス名、ロゴ、パッケージについて、「商標登録を検討すべきか」「似た商品名やパッケージがないか」「他社ブランドとの関係が気になる」とお考えの方は、お気軽にIPプラウド国際特許事務所までご相談ください。
事業内容を伺ったうえで、商標出願を検討する前に確認しておきたい点や、商品名・ブランド名・パッケージを決める際に注意したい点をご説明します。