IVS2026京都で感じたスタートアップの熱量と、弁理士としての新しい一歩2/3
2026/7/13
大企業とスタートアップ、それぞれの挑戦
私はこれまで、主に大企業の開発部門・知財部門の皆さまと一緒に仕事をさせていただく機会が多くありました。
そこで感じてきたのは、大企業ならではのスケールの大きな研究開発と、長期的な技術戦略の面白さです。
一方で、IVSに参加してみると、スタートアップ側にもまた別種の魅力と挑戦があることを、あらためて実感しました。
社会課題を自ら見つける
その課題の背後にある巨大な市場構造を読み解く
自社のビジネスモデルでその課題をどう解決し、どう成長させるかを描く
こうした「ゼロから一をつくる」プロセスを、限られた資金と人材の中で進めていくのがスタートアップの世界です。
大企業とスタートアップは、「どちらが優れているか」という話ではなく、
それぞれに異なる役割と強みを持った、社会を支える両輪だと感じています。
私はその両方に関わってきたからこそ、両者の橋渡し役として、知財の面から貢献できる部分があるのではないかと考えています。
スタートアップで「知財」が後回しになっている現実
一方で、弁理士としてスタートアップのピッチや事業内容を見ていると、どうしても気になる点もあります。
特に、SaaSやAIサービスなどソフトウェア系のビジネスは、一般的に競争が激しく、機能やUIが模倣されやすく、その結果として価格やサービスレベルでの競争に巻き込まれやすい分野だと感じています。
本来であれば、特許やノウハウの管理によって参入障壁をつくりたいところですが、
どこまでが特許として保護できるのか
他社特許をどう回避するのか
限られた予算の中で、どの発明から出願すべきか
といった判断を、少人数のチームだけで行うのは簡単ではありません。
ハードウェアを扱うスタートアップは、比較的、特許取得済みであることをアピールしているように感じました。
ただ、このような分野は、仕様を少し変えることで特許を避けて模倣することが比較的容易であり、少数の特許だけでビジネス全体を守るのが難しいケースも多いと感じています。
そのため、本来は複数の特許を組み合わせてパテントポートフォリオを構築し、事業全体を守ることが重要になります。
予算の制約
「まずは1件出しておけば安心」という感覚
から、十分な防御になっていないケースもありそうだと感じました。
「特許事務所に任せきり」の危うさと、構造的な課題
私はこれまで、大企業の案件を多く担当しつつ、その中でも比較的中小企業の案件を多く扱ってきたタイプの弁理士です。
中小企業の方と話していてよく感じるのは、「権利範囲」についてのイメージがないまま、結果として特許事務所任せになってしまっている場面が少なくないということです。
中途移管(途中から別の事務所に案件が移ること)で明細書を拝見すると、
事業の実態を十分にカバーしきれていない
少し仕様を変えられると簡単に抜けられてしまう
といった「もったいない」状態になっている案件も見受けられます。
ただし、これは特定の事務所や担当者の問題というより、
クライアント側で事業と知財戦略を十分に議論する時間が取れない
限られた予算とスケジュールの中で、最低限の出願を優先せざるを得ない
といった、構造的な事情が背景にあることも多いと感じています。
だからこそ、
最初から事業と知財の議論を一緒に行う
必要に応じてセカンドオピニオンも活用する
といった、クライアント側の“攻めの関わり方”も含めて、弁理士として提案していきたいと考えています。