スタートアップ
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IVS2026京都で感じたスタートアップの熱量と、弁理士としての新しい一歩
徳山英浩
2026年7月1日〜3日に京都で開催されたスタートアップカンファレンス「IVS2026 Kyoto」に参加してきました。
その中でも、日本最大級のピッチコンテスト「IVS2026 LAUNCHPAD」が強く印象に残っています。
LAUNCHPADでは、15社のスタートアップが、6分という限られた時間の中で、自社のビジネスモデルと未来へのビジョンをぶつけ合っていました。
優勝チームには1000万円の賞金とともに、1億5000万円以上の投資が約束されており、まさに「起業家の登竜門」といえるステージです。
社会課題 × 巨大マーケット ×成長ストーリー
今回のIVSで強く感じたのは、「スタートアップのピッチは、社会課題を解決するだけでなく、その先にある巨大なマーケットと成長ストーリーまで含めて語る場だ」ということでした。
立ち上げ期に手元資金に大きな余裕があるスタートアップは多くありません。
そのため、自社のビジネスモデルを投資家・VC・金融機関に伝え、出資や融資を受けながら事業を拡大していくケースが一般的です。
だからこそ、単に
「こんな社会課題があります」「これを解決します」
で終わるのではなく、
その社会課題の背景に、どれくらい大きな市場が広がっているのか(ときには数兆円規模のマーケット)
その中で自社のビジネスモデルがどのようにスケールし得るのか
うまくいけば大きな企業に成長し得る、という期待感
まで含めて、「これは伸びそうだ」「この事業は面白そうだ」と、聞き手をワクワクさせる必要があります。
IVSのLAUNCHPADでピッチしていた起業家たちは、まさにその「ワクワク」と「社会課題解決」を両立させようとしている人たちでした。
あのステージには、ビジネスとしての合理性と、熱意あるストーリーが同居する独特の熱量がありました。

大企業も最初は「挑戦する側」だった
もう一つ、あらためて突きつけられたのは、
「今では誰もが知っている大企業も、最初は小さなチームから始まった『挑戦する側』だった」
ということです。
通信、インターネット、ITサービス、宇宙関連といった分野でも、現在大企業として知られている多くの企業が、創業当初は少人数でのスタートから事業を積み上げてきています。
最初から大企業だったわけではなく、起業家や少人数のチームが、リスクを取りながら新しいビジネスに挑戦してきた、その延長線上に今があります。
IVSの会場でピッチしていたスタートアップの多くも、
「数年後、もしかしたら今の著名企業のような存在になっているかもしれない」
そう思わせるだけの熱量と構想力を持っていました。
その現場を目の当たりにして、
「スタートアップは社会課題を解決する存在であると同時に、『巨大なマーケットに挑む存在』でもある」
ということを、感覚として強く理解しました。この体験は、私自身の人生観・仕事観を大きく揺さぶるものでした。弁理士として、「そうした挑戦を知財の面からどこまで支えられるか」を真剣に考えるきっかけになりました。
大企業とスタートアップ、それぞれの挑戦
私はこれまで、主に大企業の開発部門・知財部門の皆さまと一緒に仕事をさせていただく機会が多くありました。
そこで感じてきたのは、大企業ならではのスケールの大きな研究開発と、長期的な技術戦略の面白さです。
一方で、IVSに参加してみると、スタートアップ側にもまた別種の魅力と挑戦があることを、あらためて実感しました。
社会課題を自ら見つける
その課題の背後にある巨大な市場構造を読み解く
自社のビジネスモデルでその課題をどう解決し、どう成長させるかを描く
こうした「ゼロから一をつくる」プロセスを、限られた資金と人材の中で進めていくのがスタートアップの世界です。
大企業とスタートアップは、「どちらが優れているか」という話ではなく、
それぞれに異なる役割と強みを持った、社会を支える両輪だと感じています。
私はその両方に関わってきたからこそ、両者の橋渡し役として、知財の面から貢献できる部分があるのではないかと考えています。
スタートアップで「知財」が後回しになっている現実
一方で、弁理士としてスタートアップのピッチや事業内容を見ていると、どうしても気になる点もあります。
特に、SaaSやAIサービスなどソフトウェア系のビジネスは、一般的に競争が激しく、機能やUIが模倣されやすく、その結果として価格やサービスレベルでの競争に巻き込まれやすい分野だと感じています。
本来であれば、特許やノウハウの管理によって参入障壁をつくりたいところですが、
どこまでが特許として保護できるのか
他社特許をどう回避するのか
限られた予算の中で、どの発明から出願すべきか
といった判断を、少人数のチームだけで行うのは簡単ではありません。
ハードウェアを扱うスタートアップは、比較的、特許取得済みであることをアピールしているように感じました。
ただ、このような分野は、仕様を少し変えることで特許を避けて模倣することが比較的容易であり、少数の特許だけでビジネス全体を守るのが難しいケースも多いと感じています。
そのため、本来は複数の特許を組み合わせてパテントポートフォリオを構築し、事業全体を守ることが重要になります。
予算の制約
「まずは1件出しておけば安心」という感覚
から、十分な防御になっていないケースもありそうだと感じました。
「特許事務所に任せきり」の危うさと、構造的な課題
私はこれまで、大企業の案件を多く担当しつつ、その中でも比較的中小企業の案件を多く扱ってきたタイプの弁理士です。
中小企業の方と話していてよく感じるのは、「権利範囲」についてのイメージがないまま、結果として特許事務所任せになってしまっている場面が少なくないということです。
中途移管(途中から別の事務所に案件が移ること)で明細書を拝見すると、
事業の実態を十分にカバーしきれていない
少し仕様を変えられると簡単に抜けられてしまう
といった「もったいない」状態になっている案件も見受けられます。
ただし、これは特定の事務所や担当者の問題というより、
クライアント側で事業と知財戦略を十分に議論する時間が取れない
限られた予算とスケジュールの中で、最低限の出願を優先せざるを得ない
といった、構造的な事情が背景にあることも多いと感じています。
だからこそ、
最初から事業と知財の議論を一緒に行う
必要に応じてセカンドオピニオンも活用する
といった、クライアント側の“攻めの関わり方”も含めて、弁理士として提案していきたいと考えています。
「どんな技術が特許になるのか」から一緒に考える
IVSに参加して強く感じたのは、
「スタートアップの多くは、そもそも何が特許になり得るのかを知る機会が少ない」
ということです。
どの機能が「技術的アイデア」なのか
どこまでが「ビジネスモデルの工夫」で、どこからが「技術の工夫」なのか
特許にするべきポイントと、ノウハウとして秘匿すべきポイントはどこか
こうした切り分けは、発明の発掘段階から弁理士が伴走し、経営者・技術者と一緒に整理していくことで、初めて見えてくることが多いと感じます。
私は、単なる「出願代行」にとどまらず、
発明の発掘
パテントポートフォリオの設計
事業計画との整合性の確認
まで含めて、スタートアップ・中小企業の知財戦略を一緒に考える弁理士でありたいと思っています。
「攻めの知財」だけでなく「訴えられないための知財」
多くの方は、「自分が特許を取る」という“攻めの知財”の方に強い関心を持たれます。
しかし、実務を見ていると、本当に怖いのは「他人の特許権を侵害してしまい、差し止めを受けて事業が止まる」リスクです。
なぜ大企業が、毎年何百件・何千件という特許出願を続けているのか。
そこには、「他社に先回りして自社の事業領域を確保する」という、攻めと守りが一体となった戦略があります。
商標についても同様で、「自分は出願していないが、今のところ誰にも文句を言われていないから大丈夫だろう」と考えていると、後から第三者に商標を取られ、
今まで使っていたブランド名を使えなくなる
在庫品の回収・差し替え
新しい名称での再ブランディング
など、想像以上のコストを負うことになりかねません。
「商標は早い者勝ち」というルールを知っていれば、
自社ブランドを守るために、自ら権利を押さえておくことは、実は非常にコストパフォーマンスの良い投資だと分かります。
この記事を読んでくださったスタートアップ・中小企業の方へ
IVS2026に参加して、私自身の仕事観は大きく揺さぶられました。
これから数年間は、「スタートアップ・中小企業が、知財の面で安心して事業を行えるようにする」というテーマに、より一層力を入れていきたいと考えています。
IVSで出会った起業家たちのように、「社会課題を解決しながら巨大なマーケットに挑む」スタートアップが、日本からもっと生まれてほしい。
その挑戦がきちんと報われるよう、知財の面から支えることが、自分の新しい使命だと感じています。
この記事を最後まで読んでくださった方には、まず次の「一歩」をお勧めします。
自社の事業が、他人の特許権や商標権などの知的財産権を侵害していないか、一度立ち止まって確認してみてください。
そのうえで、「信頼できる弁理士」と早めに出会ってください。
世の中には優秀な弁理士がたくさんいますが、
「身近に相談できる人がいない」
「今の考え方でよいのか、他の弁理士の意見も聞いてみたい」
と感じられることもあるかもしれません。
そのようなときには、私でよろしければ、セカンドオピニオンのような形も含めてお気軽にご相談ください。
【初回相談は60分まで無料です】
知財の面で安心して事業が行えるよう、弁理士の一人として、伴走しながらサポートしていきたいと考えています。