特許の価値は請求項で決まる 〜特許請求の範囲の見方とセカンドオピニオンの活用〜 2/3
2026/8/2
実際のご相談でよく見受けられるケース
しかし、実際にご相談いただく案件を見ていると、これらの点について課題を抱えているケースも少なくありません。
ケース1
発明の本質ではない限定が入っている
本来は発明の本質ではない構成要素まで請求項に記載されているケースです。
実際には、試作品の具体的な構成や、一つの実施形態に過ぎない要素がそのまま請求項に取り込まれていることもあります。
その結果、本来であれば発明の本質に比して権利範囲が不必要に狭くなってしまうことがあります。
そのような場合、競合他社は発明の本質部分を利用しながら、一部の構成だけを変更することで権利範囲の外へ逃れることが可能になります。したがって、請求項に不要な限定が含まれていると、それだけ競合他社に回避設計の余地を与えることになります。
特許は取得できたものの、競合製品を十分に牽制できない状態になってしまいます。
発明そのものは優れているにもかかわらず、請求項の作り方によって特許の価値が大きく低下してしまう典型例と言えます。
ケース2
競合他社への抑止力が十分ではない
特許の価値は、単に登録されたかどうかで決まるものではありません。
実際のビジネスでは、その特許が競合他社の参入をどの程度抑止できるのかが重要になります。
例えば、競合他社が特許公報を確認し、
「この部分を少し変更すれば権利範囲の外になる」
と簡単に判断できるのであれば、その特許の抑止力は限定的です。
一方で、
「特許を回避するためには製品設計を大幅に見直さなければならない」
「代替手段を採用するとコストや性能の面で不利になる」
という状況であれば、その特許は競合他社の参入障壁として機能します。
もちろん、あらゆる回避設計を完全に封じることは容易ではありません。
しかし、競合他社が簡単には回避できない状況を作り出すことは可能です。
特許の価値は、競合他社を完全に排除できるかどうかではなく、競合他社が簡単には参入できない状況を作り出せるかどうかにあると言えます。
ケース3
権利範囲が曖昧で解釈の余地が大きい
請求項では、A、B、Cのような構成要件だけでなく文言の選び方も重要です。
請求項の中に曖昧な表現が含まれている場合、「その製品が権利範囲に含まれるか否か」について解釈が分かれることがあります。
その場合、競合他社に対して侵害を指摘したとしても、
「そのような解釈は請求項から読み取れない」
「当社製品は権利範囲に含まれない」
と反論される可能性があります。
請求項の記載が曖昧であればあるほど、相手方に反論の余地を与えてしまうことになります。その結果、本来は侵害していると考えられる製品に対しても、権利行使が容易ではなくなる場合があります。
権利範囲を巡る争いが生じた場合には、最終的に裁判による判断が必要になることもあります。裁判には多くの時間と費用を要するため、それ自体が大きな経営リスクになり得ます。
理想的な請求項
これまで説明してきたように、請求項の作り方ひとつで、特許の価値や事業への貢献度は大きく変わります。
そのため、請求項は単に「特許を取得するため」に作成するものではありません。
将来の競合他社への牽制や権利行使まで見据えて作成することが重要です。
特に事業上重要な発明ほど、権利取得そのものではなく、「どのような権利を取得するのか」という視点が重要になります。
請求項を検討する際には、少なくとも次のような点を意識する必要があります。
発明の本質を適切に捉えており、不要な限定がない
競合他社による回避設計を許しにくい
権利範囲が明確で、相手方に反論の余地を与えにくい