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商標

スタートアップ

商標事例に学ぶ⑧ |パロディならOK?「フランク三浦」事件に学ぶ商標の見方 

徳山英浩

2026/9/23

この記事は、会社名、店名、商品名、サービス名などをこれから決める中小企業・個人事業主の方、自社ブランドを育てている方に向けて書いています。

前回は、街のスナックが「シャネル」という店名を使った「スナックシャネル事件」を取り上げました。

高級ファッションブランドとは異なる業種のスナックであっても、「シャネル」と何らかの営業上・系列上の関係があると消費者に誤解されるおそれがあるとして、問題とされた事例です。

では、有名ブランドを思わせる名前は、すべて使えないのでしょうか。

今回取り上げるのは、高級腕時計ブランド「フランク・ミュラー」を連想させる「フランク三浦」の商標登録が争われた事件です。

「フランク三浦」は、一般にパロディ商品として知られています。しかし、最終的には商標登録が維持されました。

「パロディなら許されるのだろうか」と思われるかもしれません。

ただし、この事件は、「パロディだからOK」と判断されたものではありません。商標が似ているか、消費者が商品の出所を誤解するおそれがあるかなどを、具体的な事情に照らして判断した事件です。

今回は、「フランク三浦」事件を通じて、パロディ的な名称と商標の関係について考えてみます。

「フランク三浦」と「フランク・ミュラー」

「フランク・ミュラー」は、スイスの高級腕時計ブランドとして知られています。

これに対し、「フランク三浦」は、比較的低価格な腕時計などに使用されていた名称です。「フランク」という部分は共通し、「三浦」と「ミュラー」は音の響きも近く感じられます。

フランク・ミュラー側は、「フランク三浦」の商標登録は無効であるとして、特許庁に無効審判を請求しました。

特許庁は2015年、「フランク三浦」の商標登録を無効とする判断をしました。これに対し、「フランク三浦」の商標権者が知的財産高等裁判所に訴えを起こしました。

知財高裁は2016年、特許庁の無効審決を取り消しました。その後、最高裁がフランク・ミュラー側の上告を退けたため、「フランク三浦」の商標登録は維持されることになりました。

なぜ登録は維持されたのか

商標が似ているかどうかは、単に「読み方が似ているか」だけで決まるわけではありません。

一般に、商標の見た目である「外観」、読み方である「称呼」、そこから生じる意味合いである「観念」などを、取引の実情も踏まえて総合的に判断します。

また、この事件では、それとは別に、「フランク三浦」を時計などに使用した場合、フランク・ミュラー側の商品である、あるいはフランク・ミュラー側と一定の緊密な営業上の関係等にある者の商品であると、消費者が誤解するおそれがあるかも問題となりました。前回の「スナックシャネル事件」で取り上げた「広義の混同」ともつながる問題です。

知財高裁は、「フランク三浦」と「フランク・ミュラー」について、読み方には似ているとしつつも、見た目や意味合いは異なると判断しました。

「フランク三浦」は、漢字の「三浦」を含む表示です。一方、「フランク・ミュラー」は外国の高級時計ブランドとして認識されていました。裁判所は、両者は外観上明確に区別でき、「フランク三浦」からは日本人又は日本と関係する人物という印象が生じるのに対し、「フランク・ミュラー」からは外国の高級ブランドという印象が生じると判断しました。

さらに、時計などの取引において、商標の読み方だけで商品の出所を判断するという実情も認められないとしました。こうした事情を総合し、読み方は似ていても、商標全体としては類似しないと判断しています。

パロディだから認められたわけではない

この事件について、「パロディだから許された」と理解するのは正確ではありません。

裁判所が判断したのは、「フランク三浦」という登録商標が、商標法上、フランク・ミュラー側の商標と類似するか、フランク・ミュラーの商品と混同を生じさせるおそれがあるかなどです。

知財高裁は、商標の類似、周知商標との混同のおそれ、著名商標の不正な目的による使用といった点を検討したうえで、この事件では無効とする理由はないと判断しました。

つまり、次のように考えるのは危険です。

  • パロディと分かる名称なら、自由に使ってよい

  • 有名ブランドを少し変えれば、商標登録できる

  • 高級ブランドとは価格帯を変えれば問題にならない

  • 先に商標登録を受ければ、どのような使い方をしてもよい

商標の判断は、名称の読み方だけで機械的に決まるものではありません。見た目、読み方、そこから生じる意味合いなどを、商品・サービスや取引の実情も踏まえて判断します。

また、著名な商標との関係では、商品の出所について誤解を生じるおそれがないかが問題になることもあります。

なお、この事件は、「フランク三浦」という商標登録の有効性が争われた事件です。ロゴ、広告、商品デザイン、パッケージ、販売時の説明などを含めた、あらゆる使用態様について問題がないと判断したものではありません。

事業者が考えたいこと

新しい商品名やサービス名を考えるとき、「少しもじれば面白い」「有名なブランドを思い出してもらえれば覚えてもらいやすい」と感じることがあるかもしれません。

しかし、有名ブランドを連想させる名称には、商標登録の可否だけではないリスクがあります。

  • 特許庁から登録を拒絶される可能性がある

  • 登録後でも無効審判を請求される可能性がある

  • 権利者から警告や使用中止の請求を受ける可能性がある

  • 紛争対応の時間や費用がかかる可能性がある

  • 自社独自のブランドとして育てにくくなる可能性がある

「フランク三浦」事件は、パロディ的な名称であっても、常に使えないという結論ではありません。

一方で、どこまでが許され、どこから問題になるかの線引きは簡単ではありません。話題性だけを狙って有名ブランドに近づけるのではなく、長く使い続けられる自社らしい名称かどうかを考えることが大切です。

商標を出願する前には、同じ又は似た登録商標がないかを調べるだけでなく、広く知られた他社ブランドとの関係や、実際にどのように見せ、使う予定なのかも確認しましょう。

【初回相談は60分まで無料です】

会社名、店名、商品名、サービス名、ロゴについて、「商標登録を検討すべきか」「すでに似た名称が使われていないか」「有名ブランドとの関係が気になる」とお考えの方は、お気軽にIPプラウド国際特許事務所までご相談ください。

事業内容を伺ったうえで、商標出願を検討する前に確認しておきたい点や、ブランド名を決める際に注意したい点をご説明します。